こんにちはCyack Labの藤原です。
今回は既存熱中症計をソーラーパネルでバッテリーレス化してみましたので、バッテリーレス化のメリットや方法をまとめてみました。
最後には実測データもありますので設計等で参考にしてみて下さい。
バッテリーレス化とは
バッテリーレス化とはバッテリー(乾電池やボタン電池、鉛蓄電池等)で駆動する機器のバッテリーを取り除き、バッテリー無しでも駆動できる状態にすることです。
バッテリーレス化というと主にバイクの改造方法の1つとして有名ですが、今回は既存電子機器をバッテリーレス化します。
バッテリーレス化することによって得られるメリットもありとても有効となるユースケースもあると考えています。
バッテリーレス化するメリット
電子機器の使われ方によってはコンセント等から電源を取らずに、乾電池やコイン電池等で駆動させる物もあります。
乾電池等を使用するとコンセントが無い場所でも使用できる等といったメリットばかりではなくデメリットも出てきます。
この乾電池等を使用する際に出てくるデメリットを無くす事がバッテリーレス化する最大のメリットであると言えます。
以下にバッテリーレス化した時のメリットを記述します。
電池交換の手間を無くせる
バッテリーレス化する1番の理由は電池交換の手間を無くせるからと言ってもいいと思います。
電池交換はそんなに時間がかからないと思うかもしれませんが、交換作業以外に電池残量の確認や交換用の新しい電池の調達、交換した電池の廃棄等もあり、意外と時間がかかります。
また、電池交換する機器が手に届く範囲にあれば良いですか、高所や危険箇所の周辺にあると電池交換する手間はよりいっそうかかると考えられます。
電池の充電の手間や充電忘れを無くせる
電子機器をいざ使おうとした際に電池切れになっていたり、電池が液漏れしていて使えなかったというような経験はありませんか?
バッテリーレス化は電池がなくても駆動できる仕組みがあるため充電をする手間がありません。
そのため充電忘れになることもなく、使いたい時に使えないこともなくなります。
ソーラーパネルを使用するメリット
今回はソーラーパネルを使用してバッテリーレス化しています。
電子機器のバッテリーレス化にソーラーパネルは相性がよく、その他の発電機器に比べメリットがあります。
以下にソーラーパネルを使用するメリットを記述します。
取り扱いしやすい
発電部分を考えると太陽光や熱、振動、電波などから発電するエネルギーハーベスティングと言われる発電方法や、風力や水力発電等が考えられます。
エネルギーハーベスティングについては以下リンク先を参照して下さい。
エネルギーハーベスティングとは
このような発電方法の中でも取り扱いしやすいのはソーラーパネルを使用した太陽光発電だと考えられます。
太陽光発電は日光が当たる箇所であれば設置が自由なため、他の発電方法より取り扱いがしやすいと思います。
コストがかからない
エネルギーハーベスティング技術を使用した発電デバイスは先端技術の部分もあるためコストがかかりやすいです。
風力や水力は発電機器のサイズが大きくなりやすいためコストもその分高くなる傾向があります。
それらと比較するとソーラーパネルを使用した太陽光発電は広く使われており、
大きさに比例しますが小さいソーラーパネルを使用すればコストを抑えられます。
熱中症計をバッテリーレス化してみた
今回は市販されている熱中症計をソーラーパネルを用いてバッテリーレス化し、その方法や実測データ等を以下にまとめます。
※ソーラーモジュールより大きな電力が必要な場合は「窓に取り付けるソーラーチャージャーIZA」をご使用ください。
IZAでIoT機器をソーラーパネル駆動にした記事はこちら
構成
バッテリーレス化の簡単な方法
まずダミーコイン電池(DB-R2032)に配線をはんだ付けします。
その後熱中症計を少し加工します。
今回バッテリーレス化する熱中症計はフタをしなければコイン電池を固定できません。
そのためフタに配線を通すための穴をまず開けていきます。
配線の曲げを考えて中央より少しずらして穴を開けます。
ダミーコイン電池に接続した配線を開けたフタの穴に通してから、ダミーコイン電池を熱中症計に入れます。
その後ソーラーモジュール(SPI-2333-200F)にダミーコイン電池から出ている配線をはんだ付けで接続します。
この時ダミーコイン電池の入力プラス端子とソーラーモジュールの出力プラス端子を接続し、
ダミーコイン電池の入力マイナス端子とソーラーモジュールの出力マイナス端子を接続します。
以上で熱中症計のバッテリーレス化作業は終了です。
実際に動かしてみた
今回はとりあえず動作をお見せするために窓の内側にテープで貼り付けました。
外に設置する場合は防水面を考慮してケースに入れたり、水に濡れないよう工夫して設置して下さい。
画像の方を確認してもらうとLEDが点灯しており、実際に駆動できていることがわかると思います。
今回使用しているソーラーモジュール(SPI-2333V-200F)は3.3Vまで充電でき次第出力がONになるので、ある程度曇りの日でも出力がONになります。
また、充電容量も2.0Fと大きいので、日が沈んでからも動作を継続することができます。実際にどの程度充電電圧が変化しているのかどうかは以下から確認して下さい。
24時間駆動した時の充電電圧
データは横軸が時間で縦軸が充電電圧になっています。
最初はほぼ充電されていない所からテストを行っています。
データを見ると日が昇ってからすぐ充電され、日が沈みだす16時ぐらいからソーラーモジュールからの給電が無くなっていき、充電電圧が減少していっていることがデータからわかると思います。
その後夜間でもスーパーキャパシタに充電された電力で駆動できていることがわかります。
コイン電池の終止電圧が2.0Vであることを踏まえると、日がまた昇るまで充電が足りるとデータから予想されます。
この結果から今回使用した熱中症計であれば24時間マイクロソーラーキットで駆動させることができると考えられます。
ボタン電池は使わなくても消耗する
今回バッテリーレス化した熱中症計はコイン電池駆動で約6ヶ月駆動できるようです。
そのため夏場の暑い時のみ使用するとしても毎年電池は交換しなければなりません。
この電池交換をしなくてもいいようになる点がバッテリーレス化の大きなメリットになると思います。
また、コイン電池は使わなくても消耗が進むためある程度保存できる期間があります。
メーカーによって異なりますが5年または10年と定めているメーカーが多いようです。
そのため安く大量にコイン電池を購入しても使用しなければ、長期間の保存は液漏れや本来の実力が発揮できず、最悪の場合未使用のまま破棄することに繋がりますので計画的に購入することをオススメします。
コイン電池は小型で非常に便利ですが場合によってはソーラー駆動に変更した方が交換の手間をなくせたり、コストの面でも安くなる場合があると考えられます。
まとめ
今回は既存電子機器を実際にソーラーパネルで駆動させバッテリーレス化してみました。
バッテリーレス化のメリットは電池の「交換の手間」「充電の手間」「管理の手間」が無くせることになります。また、電池交換の回数によってはコストの面でもメリットがあると考えられます。
今回既存電子機器として熱中症計をバッテリーレス化しましたが、ソーラーモジュールとダミーコイン電池を使用することで簡単にバッテリーレス化することができました。
ソーラーモジュールとダミーコイン電池はセットでマイクロソーラーキットとして販売もしていますので、ご興味ある方は以下からご確認下さい。
マイクロソーラーキットの詳細はこちらから
マイクロソーラーキットの購入はこちらから
また、より大きな電力を使いたい場合は窓に取り付けるソーラーチャージャーIZAをご使用ください。
IZAの詳細はこちらから
IZAでIoT機器をソーラーパネル駆動にした記事はこちらから